スパイ冤罪事件、宮澤・レーン事件から79年、ハロルド・レーンが亡くなって57年、ポーリン・レーンが亡くなって54年。今年も円山墓地にあるレーン夫妻のお墓の掃除と墓前礼拝が北光協会主催で行われ、宮澤・レーン事件を考える会から山本代表幹事他3名が参加しました。
ポーリン・レーンはオルガンを教会に寄贈するなど貢献しましたが、戦時中の教会は戦時体制の中で事件を無視し、レーン夫妻とかかわることを避けました。このことを戦後深く反省し、このような悲劇を繰り返させないようにと北光教会は毎年墓前礼拝を実施されています。
指方牧師の礼拝はその思いが伝わってきます。
2020年7月4日 レーン夫妻墓前礼拝 札幌北光教会 指方牧師
札幌北光教会員であったポーリン・レーンさんは、1892年に生を受けました。軍機保護法違反という冤罪によって逮捕され札幌刑務所に拘置されたのは、1941年12月8日。それは49歳誕生日の翌日でありました。懲役12年の刑が言い渡されましたが、1943年に交換船でアメリカへ。しかし戦後1951年に再び夫妻で札幌へ戻られ、ハロルドさんは1963年8月に、そしてポーリンさんは66年7月16日、74歳で召されたのでした。毎年この日に近い7月に、墓前にて記念礼拝を守り、また平和を造り出す祈りを新たにしてきました。今年は逝去後54年(ハロルドさんほ57年)になります。
2015年 いわゆる特定秘密保護法、戦争法、自衛隊のかけつけ警護の追加、共謀罪など国民を統制・萎縮させる体制が着々整えられ、毎年この場に集まる度に深刻の度合いが増している状況を確認させられてきたように思います。
先日、トランプ大統領は、人種差別への抗議運動に対し、教会をバックに聖書を手につかんで、「アメリカは偉大だ」「秩序が大事だ」「略奪したら発砲する」なんて言いました。まるで自分が正義そのものであるかのように、聖書を手にし、神の言葉を政治的パフォーマンスに利用するような姿は彼に対する批判と嫌悪感を増すことに役立ちました。その聖書こそが、「奢れる者の久しからず」「剣を取るものは剣で滅びる」ということを最も良く言い表していることを開いて読むべきです。
「草は枯れ花は散る」ということを改めて強く思わされています。人の言葉は、大言壮語しますが、実際には薄っぺらです。のらりくらりと言い逃れ、どうせ忘れるだろうと言って欺き、隠蔽し、歴史を修正し、記録を廃棄し改竄し、「責任」という言葉の意味が無化され、転嫁されています。しかし、その中で神の言葉は朽ちない、変わらない、告げられた言葉は空しく天に戻らない。わたしたちはその言葉に聴き、その言葉によって行動しなければなりません。
相変わらず力と金を持つ者が物を言う世の中のようです。グローバル化の中で便利さや自由が享受され、更にそれらが追求きれる中で、実ほなんとも不自由で窮屈な生き方に陥っています。経済成長が叫ばれJその先に平和や幸福があるかのような幻想を抱かせつつ、実際は対立や分断を引き起こし、差別や抑圧が深刻となっています。そしてその中で、多くの人を足蹴にきれる状況を嫌というほど目の当たりにしています。
世の国も力も栄も、絶対・永遠というものはないということをわたしたちは知っています。すべては過ぎ去っていく、移り変わっていく、すべてはいわば「暫定的」なもの、プロセスです。
パウロは言いました。「死も命も、天使も、支配するものも、現在・未来のもの、力あるもの、高い所にいるもの、低い所にいるものも、どんな被造物も」、暫定的なものでしかない。それは決して絶対化されない、できないものです。必ず朽ちていくもの。何が真実であるのか、パウロは言うのです。「主イエス・キリストによって示された神の愛から、わたしたちを引き離すことはできない」。わたしたちの拠って立つところは朽ちることのない神の愛、この一点だと示しています。
フィリピの信徒への手紙2章「キリストは神の身分でありながら、神と等しいものであることに固執しようとは思わず、かえって自分を無にして…」 ある人が「無と有」についてこんなことを言っています。「有」というものがあるためには「無」がなければならない。無が有を支えている。つまり、あらゆる有を有たらしめているのは無であり、神は無と表現するのが相応しい、多少極端ですが、なるほどと思います。すべてのものを生かすために、自らを無とされた。それがまさに自らを神に固執せず、自分を無とされたイエス・キリストであり、神の愛です。
忍耐や寛容ではなく臆病で短気な世の中、それゆえいつも激しく移り変わって、常に動揺している世にあって、人は力あるもの、巨大なものを偶像として頼りにします。しかし、神はカではなく、自らを無とするほどの愛によって支え導かれる方です。わたしたちは生も死も静かに貫くこの神の愛に根差しながら、今日を生きていきましょう。そして、この愛を共に生きていく世界を造り出すものとされましょう。



